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データが消えて泣かないために

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2017
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データが消えて泣かないために

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はじめに

昨今、デジカメ、スマートフォンなど、電子機器がますます身近になってきています。

個人情報や撮影した写真をデータの形で持っておくことが多くなり、データの保存がより重要になっています。

ホームページやブログも、写真や文章など、データの集合だということは言うまでもありません。
ところが、データに接することがあまりに日常的になったことで、あまりデータを保存することを意識しなくなったのではないでしょうか。
こうした意識を持っていないことで、不意にデータが消えてしまうという悲劇に見舞われてしまうことがあるかもしれません。

データを保存する際には、知らなくてはいけないことがいくつかあります。
今回は、データを永く保存するための情報をお伝えします。

ブログのデータ、PCのデータなど、大切なデータが消えても復旧できるように、こまめなバックアップの必要性を感じていただけたら幸いです。

あらゆるデータはいつか消える

たとえば、何枚ものSDカードをまとめて収納できるケースが市販されています。
SDカードの価格が次第に安くなっていることとあわせて、SDカードを「写真のアルバム」のように使う場合もあるようです。
そうしてSDカードを保存している人を見かけたら、ひとつ思い出してほしいことがあります。

実はSDカードなどの記録メディアには、「データの自然蒸発」と呼ばれる現象があり、一般的に5年~10年でデータが消えてしまうと言われています。
また、静電気に弱い、書き換え回数に上限がある(※1)など、SDカードは長期間のデータ保存に向いているとは言えないようです。

思い出のつまった大切なデータが、知らぬ間に消えてしまっては大変です。
SDカードを写真のアルバム代わりにしている人を見たら、「他のところにデータを移したほうがいいよ」と助言してあげたほうがよいでしょう。

また、SDカードに限らず、データの入れ物はいずれも経年劣化してしまうため、遅かれ早かれデータは消えてしまうものです。

突然、大切なデータが消えてしまうという悲劇を予防するためには、バックアップやアーカイブという作業を行うことが必要です。

バックアップとアーカイブ

・バックアップ:今使っているデータを、どこか他の場所にも保存しておくこと
 目的:今使っているPCなどがうまく動かなくなった際、復旧するため

・アーカイブ:重要なデータを長期間にわたって保管すること
 目的:重要なデータを時間が経っても使えるようにするため(会計関連など保管が義務付けられたデータや、家族の思い出のものなど)

混同して使われやすい二つの言葉ですが、このように目的が大きく違います。
目的の違いにより、データを保存する頻度や、保存するデータの種類が異なります。

データの保存頻度保存するデータの種類
バックアップ できるだけ頻繁 PCの動作に必要なデータや、作成・更新したデータなど
アーカイブ 定期的(1年ごとなど) 重要なデータ

バックアップは本当に必要か

あなたがPCを触り始めたころ、「バックアップは頻繁にとった方がいい」とアドバイスをもらった記憶はありませんか?
実際のところ、最近のOSであれば自動でバックアップの設定がされていることが多いため、不具合を起こしたPCの復旧のためにバックアップをとる必要性は薄れてきています。
ただし、PCが機械的に故障してしまったり、PC自体を紛失してしまうということは今でも起こりえます。このような場合には、OSによる自動バックアップでは対処できません。
そんな時のため、今でもこまめにバックアップをとっておく意義はあると言えます。

ここで問題になるのが、「頻繁にバックアップするのは面倒」という問題です。
バックアップは頻繁に行ったほうがよいため、なるべくストレスなしで行えることが望ましいでしょう。

反対に、アーカイブは頻繁には行わないものですが、データを長くとっておくことが目的なので、目的に沿って長く保存するための工夫が必要になります。

こうした問題は、「データを何に保存したらいいか」がわかると、解決に近づきます。

データと記録媒体

データ(より正確には電子データ)というものは、必ず入れ物に入れる必要があります。
この入れ物のことを記録媒体(記録メディア)と呼んでいます。

記録媒体には様々な種類があります。

PCをお持ちであれば、内蔵の記録媒体としてHDD(ハードディスクドライブ)が使われていることが多いでしょう。テレビのレコーダーにもHDDが内蔵されていたり、あとから追加できる外付け型のHDDがあったりと、さまざまに使うことが多いため、HDDは身近な記録媒体ではないでしょうか。
HDDは磁気を利用して記録するもので、「磁気記録メディア」に分類することができます(※2)。

テレビのレコーダーがBD(ブルーレイディスク)レコーダーやDVDレコーダーであれば、BD-Rなどのディスクを用意すればディスクに、録画した映像を保存することができます。
BDやDVD、それからCDなどは光を利用して記録するもので、記録方式と形状から光(光学)ディスクと呼ばれます。

そのほか、スマートフォンにはmicroSD(SDカードの一種)などの記録用のカードを挿すことができますし、本体にも記録媒体が内蔵されています。スマートフォンの内蔵記録媒体やSDカード、それからUSBメモリなどは「フラッシュメモリ」という、同じ種類の記録媒体です。
「フラッシュ」という命名は、「データが(写真のフラッシュのように)ぱっと消せる」というイメージからつけられたそうです。

このように、記録媒体は、記録するやり方(記録方式)によって分類できます。
分類ごとに、価格や保存できるデータ量の上限があるのはご存知だと思いますが、データの保存性も記録方式ごとに異なっています。

「データの保存性」とは、「データの消えにくさ」ということです。
普段、記録媒体を使っているきはあまり意識しませんが、あらゆる記録媒体からは、遅かれ早かれ記録されているデータが失われてしまう(または取り出せなくなる)、という事実があります。
「データの自然蒸発」が起こらないにしても、しばらく使っていると動作が不安定になり、やがてデータを取り出せなくなるといったことはどの記録媒体にも起こりえます。

このような、記録媒体そのものの経年劣化に加えて、その記録媒体が使われなくなってしまう、という場合があることにも注意が必要です。

たとえば、過去にMDで録音した音源を再生するにはMDプレイヤーが必要ですが、MDプレイヤーはその多くが生産が終了しているため、せっかくMDの形で保存しておいたデータも、読み込み(再生)をすることが難しくなりつつあります。
また、MDというメディア自体の入手も困難になってきているので、昔記録したMDの内容を新しいMDに移して「延命をはかる」こともしにくくなっています(※3)。
長期間データを保存する場合は、記録媒体の寿命だけではなく、その規格の寿命というものも考慮する必要があります(※4)。

とはいえ、規格の寿命を予測することは困難ですから、「広く世の中に普及していて、それなりに長い期間使われ続けている」ものを選ぶより他になさそうです。

ここで、記録媒体の特徴を保存性に注目して再度紹介します。

・HDD(磁気記録媒体)

 HDDは記録できる容量が大きく、価格もさほど高価ではありません。更に、データの書き換えも容易なことから広く使われています。

 HDDは、四角い箱型の中に、数枚の磁気ディスク(磁性体が塗られた円盤)が重なるように入っているという構造をしています。
 この磁気ディスクをモーターなどで回転させ、磁気ヘッドと呼ばれる部品が磁気ディスクに書き込まれたデータを読み込みます。(磁気ディスクと磁気ヘッドの動きは、アナログレコードと針の動きに似ています)
 HDDのように動く部分がある装置は、しばらく使っていると部品の磨耗などにより、やがて動作が不安定になります。
 また、磁気ヘッドと磁気ディスクが接触すると故障が起こりやすいことから、HDDは衝撃に弱いといわれています。
 およそ3~4年程度で寿命を迎えると言われています。(※5)

・光ディスク

 BD-R、DVD-Rなどは一度書き込んでしまうと書き換えができませんが(※6)、それなりのデータ容量を保存できる割に安価だというメリットがあるため、動画など大きなサイズのデータの保存や、HDDのバックアップ用などとして広く用いられています。
 HDDに比べて構造が単純なため、数年で使えなくなるということは少ないようです。
 ディスクの種類や材質によっては、紫外線や湿気に弱く、早々に読み込み不能になってしまうこともあります。他の記録媒体にも言えることですが、気温が高いと変形などによりデータが読めなくなってしまうことがあることにも注意が必要です。
 一般的には、5~20年で寿命を迎えると言われています。
 通常のものより高価になってしまいますが、長期保存を目的とした光ディスクも存在します(※7)。

・フラッシュメモリ

 書き換えがすばやく行え、また、HDDのように動く部分がなく衝撃に強いことから、持ち運んで時々データを書き込む用途に向いています。
 手軽で便利な反面、先述したように静電気に弱く、書き換え回数に上限があり、データの自然蒸発もあるため、長期的なデータの保存には向いていません(※8)。

・(番外編)クラウドストレージ

 スマートフォンを使っていれば、ほとんどの方が意識するしないに関わらずクラウドストレージ(略して「クラウド」)を使っているはずです。設定にもよりますが、撮影した写真、電話帳の内容などは自動でクラウドにバックアップされるようになっているからです。
 クラウド(cloud)は日本語で言うと「雲」。なんだか実体のないものを使っているようですが、実際のところ、「インターネットを経由して、どこからでも繋がれるデータ置き場」のことをクラウドストレージと呼び慣わしているようです。
 雲のように、どこにでもデータの窓口があると考えればイメージしやすいでしょうか。
 スマートフォンとの連携で使われていることや、無料でのサービスがあることから、広く使われるようになっています。
 このデータ置き場は、多くの場合、さまざまな地域にある「データセンター」という施設の中にその実体があります。データの記録媒体となっているのは、HDD(一般に、PC用よりも高性能なもの)をはじめ、様々な記録媒体が使われているようです。
 クラウドストレージを使う場合、記録媒体などの寿命を気にする必要がないという優れた点があります。
 その反面、クラウドストレージのサービスを運営している団体が、サービスを停止してしまうこともありえますし、情報漏えい、流出などの危機にさらされていることに注意するべきでしょう(※9)
 数年ぶりにデータを取り出そうとしたら、すでにサービスが終了していて、アクセスすることもできないという可能性もあります。
 また、保存するデータ容量が大きくなると、有料サービスでなければ対応できない場合があることも覚えておきましょう。

 そのような注意点がありつつも、自動でデータをバックアップしてくれる、どこにいても同じデータにアクセスできるなど、一度使ったら手放せないほどの便利さを備えているのがクラウドストレージの魅力です。

表にまとめます。
(「利便性」は、データの出し入れが簡単かどうか、ということを示す項目です)

代表的な記録媒体の特徴

記録容量価格利便性保存性備考
HDD
光ディスク
フラッシュメモリ ×
クラウドストレージ 内容はサービス運営者の事情に依存するため、代表的なクラウドストレージの評価を記載

これらを踏まえて考えると、記録媒体にはそれぞれ適した用途があることがわかります。

・お勧め用途

HDD:通常の使用とバックアップ
光ディスク:重要なデータのアーカイブ
フラッシュメモリ:一時的なデータ置き場
クラウドストレージ:HDDなどのバックアップ用

本題に戻って、データの長期保存について考えてみましょう。

ここで扱った中では、光ディスクを保存用として使うのが最適なようです。
長期保存用のディスクを使うのが望ましいですが、通常の光ディスクであっても、複数の保存先を用意するなどすれば、保存性は上がります(光ディスクとHDDに同じデータをとっておくなど)。
念のため、5年に1回程度、データの抜き取り調査(保存したデータがきちんと読み込めるかをテストする)をしておけばさらに安心でしょう。


HDDはデータの書き換えが容易という特徴を生かして、これまで通り、普段のデータ保存に活用するのがよいでしょう。

この記事を読んで、もう一度使い方を考えてほしいのがフラッシュメモリとクラウドストレージです。

フラッシュメモリは、すでに何度か述べてきたように、長期間データを保存するには向いていません。
デジカメやスマホでのデータ保存用として利用し、データはなるべくこまめにHDDへコピーしましょう。
フリーソフトなどを利用して、PCに挿し込むと自動でバックアップされるように設定することも可能です。

クラウドストレージは、スマートフォンの自動バックアップをはじめ、あまり意識しなくてもデータをバックアップしてくれるという高い利便性を持ったサービスが多数あります。
このような高い利便性があることは、万一のデータ流出の際には災いに転じることがあります。つまり、公開したくない情報が公開されてしまうリスクがあるということです。
ですので、クラウドストレージを使う際には、情報が漏えいしてしまうというリスクを常に意識しながら利用したほうが良さそうです。
一説によると、サイバー攻撃は3秒に1回の頻度で起きているそうです。クラウドストレージからのデータ流出は身近な問題と考え、個人情報はじめ重要な情報はなるべくクラウドストレージには置かないようにするなどの工夫が必要でしょう。
たとえば、自動でバックアップするフォルダを指定できるクラウドストレージを使う場合、個人情報などのデータはそのフォルダには入れないとルールを作っておくなどすれば、データが流出しても被害は軽くなります。


まとめ

・一時的に記録する用途に向いたもの:フラッシュメディア
・日常的に記録する用途に向いたもの:HDD
・長期保存する用途に向いたもの  :光ディスク
・自動バックアップなど補助的な用途に向いたもの:クラウドストレージ


データが消えて泣かないために

デジカメが普及して久しくなり、家族の思い出がデータの形で残っているという方も多いことでしょう。
電子データそのものは経年劣化しませんが、データを保存している記録媒体は経年劣化から逃れられません。

すべてのデータを常にバックアップして、長期保存用にも残しておくということは現実的ではないものの、いつ、いかなるトラブルが起こるかわかりません。
大切なデータが消えないように、日常的に対策を行っておくことはとても重要です。

データが不意に消えてしまって泣くことのないように、大切なデータとそれ以外を分別する癖をつけ、大切なデータはいくつかの方法で保存するようにしましょう。


※1 書き換え回数の上限は、技術の向上などにより、あまり気にする必要がなくなったという説もあります。
※2 業務データの長期保存を目的とした磁気テープという製品もあります。
※3 加えて、MDはMDからMDへのコピーを制限していたため、コピーする手段を用意するだけでもハードルが高いと言えます。
※4 もうほとんど使われていませんが、かつてPCの記録媒体といえばフロッピーディスクでしたし、それ以前はカセットテープ、さらにもっと以前はパンチカードと呼ばれる、厚手の紙に規則的に穴を開けたものがコンピュータの記録媒体として使用されていました。現在でもまれにこれらの記録媒体が使われているところもあるようですが、特殊な用途を除き、これらの記録媒体はすでに規格の寿命を迎えていると言えます。
※5 この期間は、PCの買い替えサイクルともだいたい一致しているようです。
※6 BD-RE、DVD-RWなど、一度データを書き込んでも、中身を空に戻せるもの、あとからデータを追加できるものなど、複数の規格があります。なお、BDは、光ディスクの収納によく使われている不織布への保管はNGとなっているため、プラスティック製などの収納素材などに保存するようにしてください。
※7 長期保存用の光ディスクは、200年間保存できるという説もあります。もちろん、実証はされていません。
※8 HDDの代わりにフラッシュメモリを用いたSSD(Solid State Drive)という製品もあり、近年は広く使われるようになってきました。
※9 データの漏えい、流出は、自分の手元で記録媒体を管理する場合でも起こりうる問題です。「自宅の金庫で保管するか、銀行の金庫に保管するか、どちらが安全か」と置き換えると、自己管理とクラウドとの違いに近いと言えるかもしれません。

参考: 電子情報の長期的な保存と利用(国立国会図書館)
記録媒体・記録メディアの保存条件と推定寿命(富士マイクロ株式会社)
大切な写真データの長期保存方法(ALMEDIO)
用語集|アーカイブ(クラウド・データセンター用語集)
光ディスクの取り扱い上の注意(日本記録メディア工業会)
ハードディスクの仕組み(Logitec データ復旧技術センター)
パソコンの買い替え年数をグラフ化してみる(2017年)(ガベージニュース)

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